自分の名前で売るの?それとも会社組織にするの?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

子供が生まれてすぐその日から、立派な親になれるわけではないと、子供をもってから気づく人は少なくないと思う。
「それでも、子供にとって父親・母親は自分だけだから、親としての行動が求められるのだ」と自覚を持つところからスタートし、実際は子育てをしながら、子供に育てられながら親になっていく。

経営者も、会社を作ってすぐ、立派な経営者になるわけではなく、日々、経営と向き合いながら経営者として成長していくものなのではないかと思う。

経営者として、どろくさく育っていく

中には会社を作ってすぐスケールさせるような、ものすごい才覚の経営者もいるだろうが
これは、そのような天賦の才を持った一部の特殊な人の話ではなく、いわば私のように叩き上げのプレイヤー・職人だった人が、何らかのきっかけや決断を経て起業し、どろくさく成長して、経営者になっていくときの話だ。

天賦の才とまではいかなくても、もしかしたらポテンシャル的な経営の才覚の有無というのはあるかもしれない。しかし才覚があったとしても、実際には、経営者たらんと勉強をし、社員と向き合い、お金と向き合い、組織づくりと向き合い、日々試行錯誤しながら、その才を磨いて、自分なりの経営というものを作っていくのではないか。

その過程で、大きな影響を与えてくれることの1つに、すでにその道を通ってきた、先輩方との会話があると思う。
彼らに問われたこと、教えられたことは、すぐには実感がわかなくても、自分の中のどこかに残っていてじわりじわりと効いてきて、長期的に大きな影響を与えてくれることがある。

いつの間にか、自分の中にそういうエピソードがいくつかたまっていることに気づいたので、少しずつ思い起こしながら、書けるときに、気ままに書いていきたいと思う。

半分は自分の振り返り用に。
もう半分は、いつか私のような、どろくさい感じでフリーランスになった人と、フリーランスを得て会社を作り駆け出しの経営者になったような人が、何かしらの情報を探してここにたどり着いたときに、何かのヒントとして役立ったり、こいつよりはましだよなと思って、前進してくれたりすることを願って。

フリーランスから経営者になる、ファーストクエスチョン

自分の名前で売って仕事を増やしていきたいの?
それとも会社組織にしていきたいの?

私が経営者としての最初の「問い」を受けたのは、すでに副業的にフリーランスとして起業していたが、会社設立はおろか独立もしていなかった頃のこと。
WEBサイトを作ってほしいとお引き合いが増え始め、あるデザイン会社の先輩社長に、デザインの外注を依頼したときに、
「めぐは、自分の名前で売って仕事を増やしていきたいの?
それとも会社組織にしていきたいの?」

と、問われた。
当時、末の0歳児を抱えながら、目の前のお客様のご依頼に応えることだけで、頭がいっぱいで、全く組織にするというところまでは想像も及ばなかった。が、これはその後、数年にわたって私の中で反芻し続けた。そしてゆくゆく会社を作ることにつながっていく。

自分のファンではなく、会社のファンを増やす

同時に、
「現状、お客様は めぐに作ってほしいと思っているのではないの?
だとしたらうちに外注してしまってお客様は大丈夫?」
とも問われた。この問いの中には多くのものが含まれていた。

その案件は私がデザインをしなくても、良いものができればOKというお客様の依頼だったが、確かに、中には「めぐだから」と思って依頼してくださる方もいる。
私は、黒子の外注さんに作ってもらったものを「私が作りました」といえるような器用な性格ではない。だからフリーランス時代は、上記のケースは例外としてほとんど外注に依頼をすることはなく、顧客対応から納品物の制作、アフターサポートまで全部1人でするタイプのWEB制作者だった。

しかし依頼が増えると1人ではこなせなくなる。無理をして全部自分でやろうとすると、1件あたりにかけられる時間が減って、クオリティが下がる。クオリティを維持しながら作れる量を増やすには、誰かの手を借りなくてはいけない。外注であっても、パートさんや社員であっても。

会社に長く属している人には、全体で成果を出すというのは、当たり前の感覚かもしれないが、フリーランスとしてずっと「1人で全部やる」ことに慣れていた私には、なかなかそれが難しかった。1人でやった方が効率がいいと感じてしまう。でもそれではこれ以上大きくなれない。

この問いの効果は、特に会社を設立してからさらに深まり、具体的になる。

私以外の人と協力して作る場合は、それでもクオリティや成果が担保され、むしろ私1人で作るよりも、良いものができるというところをお客様にも、納得いただかなくてはいけない。特にもし法人化して会社組織としていくなら、「私個人」のお客様ではなく、私以外の社員や、会社のファンになって信頼してくれるお客様を増やしていかなくてはならない。チームとして成果がだせるようにメンバーを育て、メンバーにもお客様と信頼関係を築いてもらい、並行して私への属人性を排していかなくてはならないのだ。

まずだまされたと思って、1人雇ってみなさい

そして彼が1人で独立起業した頃、やはり先輩経営者から
「まずだまされたと思って、1人雇ってみなさい」
と勧められ、それがすごく前進につながったという話を聞かせてくれた。
自分が外回りをしている間に、社内で仕事を進めてくれる人がいる安心感がとても大きかったと。
これは後々、私が会社を設立するときにも、最初の社員を雇う決断を大いに後押ししてくれた。

人を雇えば、仕事が多いときも少ないときも、その人が役に立っても立たなくても、お金を払わなくてはいけない。養い続ける責任が伴う。

当たり前の話だけれど、

時間労働に対する最低限の報酬本人に支払う金額本人が会社にもたらしてくれた利益

となるのが理想で、そうであれば助かるけど、

本人が会社にもたらしてくれた利益時間労働に対する最低限の報酬本人に支払う金額

となれば雇うだけ赤字になる。
自分が十分に営業活動をして、その人の分まで仕事を受注すると同時に、本人にも付加価値のある仕事をしていただかなくては、成り立たない。

その上、雇った人が新人さんのうちは、

  • 自分の仕事を止めて、教える時間をとる
  • その人が、仕事をうまくこなせず、締め切りに間に合わなくなったら、引きあけて代わりに自分で終わらせる
  • 並行して自分の仕事もして、2人分の給料を稼ぐ(またはそうせずに赤字で粘る)

という一時的なカオスが発生する。
これが5人いる企業に1人増えるというケースなら、1人あたりの負担は1/5=20%だが、
1人しかいない事業所に1人増えるのだから、1人あたりの負担は100%。
単に「教える」ということなら会社員時代に、自分の仕事の傍らで後輩の育成をすることもあったが、並行して「その人の分も稼ぐ」という問題まで加わるので、ずいぶんと事情が違う。

この期間を乗り切らなくては、収益のあるステップに進めないのだが、0歳児を抱えてやっと仕事の時間を捻出し、自分を養うだけで手いっぱいの当時の私には、なかなかそれができるイメージがわかなかった。

はじめから能力が高くて、教える必要がないくらいできる人を雇うという考えもあるが、そんな人はすでに独立していたりするし、もし来てくれたとしても、よく言われることだが、能力が高くて企業文化の合わない人を雇ってしまったら、かえってリスクだ。

そして、お金とは別の問題として、「一緒に働いてくれる人を幸せにできるのか」、「仕事は楽しいけれど、泥臭くて苦しい面もあるのに、一緒にやってくれなんて言えるのか」などと考えると、当時の私には、とても誰も雇う気にはなれなかった。

しかし不思議と
「まずだまされたと思って、1人雇ってみなさい」
という一言は私の中に残り続けた。
不採算だとか、負担をかけるのは嫌だとか、ごちゃごちゃ考えすぎてしまうと、誰も雇うことはできない。えいや!と雇って、色々任せてみることも必要なんじゃないか。

そして問い続けて3年ほどたった頃、今の相棒が「一緒に仕事をしたい」と2回目に言ってきてくれた時に、はじめてYESと言った。
もちろん相棒本人の熱意と、元からの信頼関係があってのことだが、この一言が後押しになったことは間違いない。

こんなお節介なら嫌じゃない

そんな話をしながら
「お節介かもしれないけど」
と彼は言ったが、駆け出しの私をみて、きっと自分が駆け出しだった頃のことを重ねて、放っておけなくなって問いかけてくれたのだろう。
こんなお節介ならいくらでもまたお願いしますと、こちらからお願いしたい気持ちだ。

そうして、フリーランスだった私の心の泉に、経営者になる薬の、最初の一滴を垂らしてくれた彼には感謝に耐えない。
この薬は数年越しで効いてくるようで、現状はその効果のまだほんの一部かもしれない。
落ちた水滴の波紋が泉の端まで広がって、はねかえり、また内側に向かって戻ってきて、また外側に…と繰り返すように、5年以上経った今も、波及効果がまだ持続し続けている気がする。

今や、3人目の正社員と、2人の時短スタッフも迎え、ずいぶん組織らしくなってきたと思う。
私自身の心構えやスタンスにも変化が生じている。
また気の向くままに、そのあたりのこともつらつらと書いていきたい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

書いた人
めぐ茶めぐ茶
Web制作とシステムの会社をやってるワーママ社長です。
詳細プロフィール